July 04, 2013

掌編私小説「母様と旅行とわたくし.」

あらずもがなの前口上:以下の文章は看板通り「私小説」でありますからして,ワタシもその他の人物も文章上の人物であって,現実の物とは些か異なることは言うまでもない.以上,心得られたし.


さても.

 ウチの母様はちょこちょこ二泊三日ぐらいの旅行に行く.行きたい場所が出来ると旅行代理店に出かけて行って,諸事万端整えて出かけて行く.一人で行く.気を使ったり使われたりが面倒だし,勝手が出来るから一人が楽しいんだそうである.

 出かけるにあたり,宿泊先などをメモっておいて行く.などということはしない.もとよりケータイの類いは持っていない.運転免許証や保険証は持ち歩いているから,生き死にに関わるような重大な事が起きれば,それをたよりに警察なりなんなりしかるべき筋が職務として連絡を付けるであろうから必要ないという.ちなみにアドレス帳も持っていない.親戚に自分の友人,シャンソンのお師匠様関係など,必要な電話番号と住所はことごとく諳んじているので,かけるぶんには不自由ないし,かかってきた物が知人からかどうかはナンバーディスプレイ見ればわかるので,こちらも困らないらしい.

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掌編小説「Kreuzfahrt」

 梅雨の晴れ間,という誠に得難い日の午前中.電源キーと燃料コックがONとなった時点で私の準備は整っているというのに,我が主人は先程からスタータレバーを踏み降ろし続けている.いやしくも我が主人を名乗るのであれば,気温,キャブレターの油面,アクセルの開け具合等を勘案し,エンジンが冷えていても数回で発動させて頂きたい物である.技量が有れば充分可能なのである.しかし,出来ない.読者諸兄には,主人が技量未熟の為に「古いバイクは大変ですね」などと通りすがりの人から声をかけられるこちらの気持ちも少しは汲んでいただきたい,時折知人のSa...氏達にお誘いを頂き,一緒に走っても休憩時間の度にこの始末で,見かねた同氏に一発始動して頂く事が多いという,誠に情けない人なのだ,我が主人という人は!!.

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